泣き童子 三島屋変調百物語参之続
6月28日金曜日、文藝春秋より発売か。
宮部みゆきと言えば、ほとんどが現代において、人間の深層心理を突いたサスペンスと、事件にまつわる不可思議な経緯が、見事に融合された物語の展開で気になる作家の一人であることを、ついつい実感してしまうもの。
しかし、恥ずかしながら、江戸時代を舞台にした時代小説も手掛けることを知ったのは、数年前。
第一巻の『おそろし 三島屋変調百物語事始』、第二巻の『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』、いずれも吸い込まれるかのように読み終えて...。
一連の不可思議な物語には、いろいろと考えさせられるものがあったなあ。
第一巻では、主人公である17歳の少女・おちかが、江戸・神田で袋物屋「三島屋」を営む叔父夫婦の下で、行儀見習いとして身を寄せてから。
幼少当時に遭遇した事件から心を閉ざして以来、ふさぎ込む日々を過ごすことの多いおちかに、叔父の伊兵衛から来訪客の対応を任されてからが、心の再生の始まりなんだよなあ。
語り手である来訪客たちから聞かされる、幽霊や幽鬼の恐ろしげな姿を思い浮かべては震えてしまうものの、おちか自身で浄化・変容・再生してゆく姿、心が救われたかのよう。
それでも、一番考えさせられたのは、叔父・伊兵衛からの諭し、
「何が白で何が黒かということは、とても曖昧」
第二巻では、一度に一人ずつ、一話語りの百物語の聞き集めをすることで、いくらか心の救われたおちか。
毎度、不思議話を携えて訪ねてくる客たち。
互いにより深まる交流が基軸にあって、温まるかのようだった。
まず、前作を読んでいない人たちへの前書きによる説明。
初めて手に入れた人たちにも、読みやすい工夫の施されているのが、嬉しい。
幽霊話よりも、それにまつわる人情話で、その上かわいい描写に、心が温められたみたいだ。
第一話「逃げ水」、第二話「藪から千本」、第四話「吼える仏」あたりかなあ。
なぜなら、見開きごとに収められた南伸坊氏の挿絵、見事に物語と調和していたことも、心に響いていたかもしれない。
もちろん、他への装丁、挿画、そして表紙のイラスト、同じく心に響いていたのは言うまでもない。
最も心を揺さぶられた物語は、表題作で第三話の「暗獣(あんじゅう)」。
隠居した"深考塾"大先生の加登新左衛門と初音の老夫婦と、人に捨てられた屋敷に棲む真っ黒な暗獣"くろすけ"との交流、そして別れ、切なかった。
そして、この度発売されることとなる第三巻。
これまでの不思議で切ない物語の魅力は不変。
来訪客からの不思議話、おちかがどのように受け止めてくれるのか、一番気になるところ。
おちかは、ほぼ心を再生されたといってもいいかなあ、もう後ろ向きじゃない。
発売が待ち遠しいなあ。
2013-05-05 |
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