だから荒野 桐野夏生
10月8日火曜日、毎日新聞社より発売。
桐野夏生の最新刊という耳への触りのいい言葉だけが気になって、つい購入。
当たり外れが大きいことを承知で。
主人公は、傲慢で身勝手な夫や息子たちに軽んじられながら、家庭を支えてきた主婦・朋美。
46歳の誕生日、つい衝動にかられ夫自慢の愛車で家出、「初恋の男が長崎にいるらしい」という理由で、長崎に向かって高速道を走り始めて...。
奪われた愛車と女の連絡先の入ったゴルフバックばかり心配する夫を尻目に、朋美は自由を謳歌する日々。
ハードボイルドで強くなったかなような女性を主人公にした物語にふさわしい展開の速さと独特の描写には、思わず心が躍った。
ただ、旅の途上で出逢った認知症の老人と亀田という人物の立ち位置が解かりづらく、長崎への原爆投下にまつわる物語まで絡めたことあって、奇妙な方向転換と同時にトーンダウンしてしまったのが、心残りかなあ。
そして、どうしようもないはずの息子たちが、突然僅かながら改心し、自分勝手な夫まで反省し始めたりと、家族崩壊と再生への期待という、予定調和の展開へ。
危険を伴う心の冒険を求めたがるかねてからの愛読者には、不評らしいけど、
やはり男性の立場からは、表面上の態度は素っ気なくても、心の奥底では相手とともに生きることによる安定を求めたがっているものだろうから、安心できる予定調和にしてほしいと願うのかもしれない。
この物語は、男性全員への警告なんだろうなあ。
仮に再生の機会が与えられたとしても、以前と同じ繰り返しだったら、もう二度と取り返せない。
どうしてなんだろうなあ。
互いに愛し合って理解し合ったはずなのに、愛情と感謝が次第に薄れてしまって、崩壊してしまうなんて。
好む好まざる関係なしに、他人同士が一緒になった以上、ガラスの家同然であることを意識して、常日頃から互いへの感謝と愛情を忘れてはいけないことが、肝心要ということなんだろうなあ。
2013-11-14 |
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