朝井リョウ 武道館 あらすじ 感想
「久々にあの朝井リョウが帰ってきた!!!」
そう、あの特定のかなりニッチなコミュニティ(例えるならば、中高生時代、就活の大学生など)特有の一見不可解で、秘匿的な感情の動きを、少し残酷に明るみに出して、最後には昇華させる作風の魅力が再び...。
それは、4月24日金曜日発売の『武道館』(文藝春秋)で、ここ10年近く定着しつつある、生き残りをかけてしのぎを削る"アイドル"が題材。
結成当時から「武道館ライブ」を合言葉に活動してきた女性アイドルグループ・NEXT YOUに属するメンバーと、彼女らを取り巻く人間模様を中心とした、物語の展開は目が離せない。
例を挙げるならば、独自のスタイルで行う握手会、売上ランキングに入るための販売戦略、一曲につき二つのパターンがある振付、さまざまな手段で人気と知名度をあげ、一歩ずつ目標に近づいていく、それぞれのメンバーの内面の浮き沈み。
反面、恋愛禁止、スルースキル、炎上、特典商法、握手会、卒業、といったアイドルを取り巻く言葉たちの交錯に垣間見る、望まない種類の視線も...。
アイドルをアイドルたらしめてるものとは一体...。
読み終わった今でも、まだその答えは出てこないまま...。
ただ、一つ言えることは、アイドルも一人の人間だということ。
「人って、人の幸せな姿を見たいのか、不幸を見たいのか、どっちなんだろう」
「アイドルを応援してくれてる人って、多分、どっちもあるんだろうね」
このモノノーグは、心に突き刺さってしまった。
表面上、軽薄そうな周囲の取り巻きの多い中でも、飄々としている陰で、必死に生き抜こうと、もがいているだけに...。
アイドル戦国時代と言われ始めて久しく...。
実際に彼女たちがこれを読んだら何を思うのか、否応なく気になってしまう一冊だった。
特に、一番衣装が似合う(?)とされる、たった一度きりの18歳にて、世間でいう不祥事を起こしたとみなされてしまったアイドル・愛子の等身大の姿を見届けるかのような展開には...。
2015-04-30 |
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