辻村深月 家族シアター 感想
この年2014(平成26)年もいよいよ年の瀬...。
この年1年間を振り返ってみれば、いろいろ想いを馳せてみたくなるもので...。
あの「3.11」こと2011(平成23)年3月11日金曜日の東日本大震災以来、"絆"という言葉が重宝されて久しく....。
あらゆる意味における"風化"を無意識のうちに実感してしまいがちなったのは、もどかしいもので....。
それゆえに、年末年始における家族の集まりは、かなりの貴重なひととき....。
それぞれの立ち位置を自然と意識するためにも...。
そのような気持ちの強まる中で、ふと書店で目にすることになった、10月21日火曜日発売の辻村深月の最新刊『家族シアター』(講談社)...。
7編の短編集に描かれたそれぞれの家族物語による構成は、読みやすさはもちろん、心温まるものばかりで....。
「「妹」という祝福」には、中学生以来のマジメな由紀枝とイケてる妹・亜季との対比を中心に描かれ、姉・由紀枝の結婚式にて、一つ下の妹・亜季の見つけた由紀枝からの手紙による温かみが...。
「サイリウム」には、弟・ナオからアイドル追っかけをしていることをバカにされていた、バンド追っかけの姉・真矢子の揺れる心が...。
「私のディアマンテ」には、大学受験を控えた優等生の娘・えみりと心配性の母・絢子それぞれの気持ちのすれ違いが...。
「タイムカプセルの八年」には、出勤初日の息子・幸臣の小学生当時に埋めたタイムカプセルのことを思い出す、大学准教授の父・水内の想い。
「1992年の秋空」には、宇宙を愛する一つ下のうみかの考えを理解できないまま、うみかの苦手とする逆上がりの練習に付き合うことになる、6年生のはるかの想い。
「孫と誕生日」には、アメリカに住んでいた長男・孝治夫婦から一緒に暮らすことを提案され、日本で同居することとなった70歳目前の木原の想いと、日本の生活になじめない孫・実音のもどかしさが...。
「タマシウム・マシンの永遠」には、赤ん坊・伸太と妻・希美と一緒に実家に向かう俺による希美と出逢った当時が、余すところなく描かれていて....。
素晴らしかった。
それでもあえて、印象に残る物語としての一つを選ぶならば、 「1992年の秋空」かな。
幼少の頃、上に姉妹がいたからなのか、はるかの妹を思うツラい気持ちに一緒に胸が痛くなり、そして終盤において胸から温かいものがこみ上げてきて...。
家族とは空気のようなもの。
それだけに、血が繋がっていればこそのイライラや嫌悪感の際立つ反面、家族だからこその思いやりや気配りは、より大きなものに...。
人としての優しさに触れることのできる作品は、素晴らしい。
家族との関わりにおける節目節目を意識する度に、読み返したくなる貴重な一冊にふさわしいや。
末永く心に残るんだろうなあ。
2014-11-14 |
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