逆境経営 山奥の地酒「獺祭」 桜井博志
1月16日木曜日放送のテレビ東京系『カンブリア宮殿』で採り上げた旭酒蔵社長・桜井博志の生きざまが、未だに気になるところ...。
社長の金言として、
「やらないよりやってみて修正する方が近道」
「挑戦の先に“飽きられない味”がある」
これらの境地、すなわち"加点主義的な発想"に至るまでの紆余曲折は、まさに大きいもの。
すぐさま、1月18日土曜日発売の『逆境経営 山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法』(ダイヤモンド社)を購入して読み始めるものの、仕事が一段落しづらいことに加え、奥が深すぎて思わず立ち止まってしまうこともしばしばで、いろいろな意味で考えさせられた。
「獺祭」。
"カワウソ"の祭り、と書いて"だっさい"。
山口県岩国市の山里にある旭酒造の周囲半径5km圏内の人口は300人ほどという過疎地域。
現在の桜井社長は事情あって先代だった父に勘当され、一時的に酒造りから離れていたものの、その父の急逝を受けての約30年前、旭酒造の三代目として就任。
就任当時は、全国的には全く無名の小さな酒蔵で、1975(昭和50)年をピークとする日本酒市場の3分の1までの縮小の煽りもあって、業績が悪化、関係者から「いずれ潰れるだろう」とささやかれるほど。
ふと気づけば、日に何度も自分の死亡保険金を計算してしまうほど追い詰められ、ふたりの子どもの寝顔を見ながらの眠れぬ日々。
悲しいかな、人間というものは、死に直面する極限に追い詰められた時ほど、本性が現われてしまうもの。
そこで緊張の糸が断裂してしまうのか? ふと一息つくかのように達観したかのような心地となるのか?
この運命の分かれ目に関しては、我ながら未だに悶々とさせられてしまう。
桜井社長は、生きてやれることをやろうと決意。
目の前の常識をすべて疑い、新しい旭酒造に生まれ変わろうと。
「変えるべきでない伝統は何がなんでも守り抜き、一方で、大事なものを守り抜くために変わることを恐れない」の気持ちで。
具体的には、
小規模な仕込みでないと造れない小さな酒蔵であることが強みになるよう、少量でも愛され続ける純米大吟醸酒に商品をしぼること。
勝負する市場は、地元より大きい東京を中心とする全国市場。
杜氏と蔵人に任せきりだった酒造りを、可能な限り数値化し安定生産を目指して、社員だけで通年生産する仕組みの構築。
純米大吟醸酒という技術的に難しい最高峰のものへの特化の鍵は、「磨き2割3分」。
精米して雑味となるタンパク質などを取り除く作業、中でも手間も時間もかかる究極の磨き。
お客様に旨い日本酒を呑んでもらいたい、そして「旨い」と言ってもらいたいという、桜井社長と社員の強いこだわり。
以上の背景を経て開発された「獺祭(だっさい)」。
そして2012(平成24)年、ついに純米大吟醸市場でトップに。
海外市場開拓も約20ヶ国を数え、今や業界唯一の勝ち組に。
桜井社長曰く、
「客から見て、最高の酒を追求している酒蔵だから存在価値がある。どこにでもある酒蔵なら、価値はない」
「打席に立たせてもらったからには、三振して無様に尻餅をつこうが、バットを振らなければならない」
「もともと私は、気弱で重圧に弱い。しかし、酒蔵を継いでからは泣き言を言っていられなくなり、精神を鍛えられた。というより、“社長を演じている"と言ったほうが正しいかもしれない。そう思い込むことで、気弱になりそうな大仕事にも取り組める」
逆境に陥った時にとった方策・その根底にある哲学。
酒そのものを知るための本のみならず、営業戦略の参考書としても有用。
地方にいても戦略次第で業界のオピニオンリーダー的存在になれるということを証明できるとは...。
まさに素晴らしき1冊。
時々目を通す必要あるかなあ。
遠い将来に直面させられるかもしれない窮地もしくは逆境を直感した時、またはその時に備えた心の栄養のためにも...。
2014-03-21 |
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