居酒屋ぼったくり 秋川滝美 アルファポリス 感想
仕事が久々に一段落ついて、気分転換を兼ねては書店へ立ち寄ってみた。
入ってすぐに、次の謳い文句に心惹かれた。
「旨い酒と美味い飯、そして優しい人がここにいる。」
その書店の推奨による勢いのまま購入して読むこととなったのは、すでに5月7日水曜日に発売の『居酒屋ぼったくり』(秋川滝美 / アルファポリス・星雲社)。
この御時世においては珍しい義理人情と温かい人々のふれあいの描かれた短編連作小説。
全国の銘酒情報といい、簡単なつまみの作り方といい、著者の知識の深さや配慮を大いに実感。
まさに、料理の描写力の際立つ、居酒屋小説の王道を進んでいるかのようだった。
第一、設定がしっかりしている。
8人がけのカウンターと小上がりに卓が2つの小さなお店を取り仕切るのは、早いうちに両親を亡くした薄幸の姉妹・美音と馨。
特に、姉の美音は苦労を乗り越えたしっかり者ゆえ、料理名人の父の味を受け継いでいて...。
細かいところに気を回しながらも、やや頑固で、口も悪い。
それぞれの客の好みや背景まで考えながら、毎日、気の利いた肴でもてなす。
お店に集うのは、誠実に毎日を生きている反面、それぞれに悩みを抱える市井の人たち。
お店の美味しい肴を食べて、美音と話をするうちに人たちは癒され、美音自身も救われていく。
全体的に、不思議に居心地が良く、もう少しとどまっていたいと思いつつ一気に読んでしまうような衝動にかられてしまいそう。
もし、自分の家の近くに、このような飲み屋があったら、どれだけ心が安らげるか、みたいな。
まさに、ほのぼのとした紹介で、お酒好きのみならず、お料理好きにも大いにためになる、面白い作品で、気の向いた時に気軽に目を通せる一冊だった。
ただ、贅沢なわがままを口にするなら、文章の少なめゆえに、もう少し長く時間をかけて楽しみたかったかなあ。
もし、続編が完成したら、ぜひ購入したいな。
2014-08-06 |
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